商品を売るための施策であるマーケティング。マーケティングそのものは従来あるものですが、2000年代以降、インターネットの急激な普及によりWebマーケティングという仕事が生まれました。
また、近年では副業をはじめたり、転職したり、はたまた独立したりと、それまでとは異なる業界でのキャリアプランを描く人も多くなっています。今回は、さまざまある仕事の中でも注目を浴びているWebマーケティングの仕事について、概要やキャリアプラン、キャリアアップのために必要なスキルなどについて解説していきます。
Webマーケティングの仕事内容
Webマーケティングの概要
Webマーケティングとは、WebサイトやWebサービスなどのコンテンツを通して、集客、販売、リピート(LTVの最大化)などのための仕組みを作る仕事です。一見華やかに見えるかもしれませんが、市場調査や競合調査、販売戦略の立案から市場テストなど、地道な作業も多い仕事です。
Webマーケティングの具体的な仕事内容
Webマーケティングの範疇に含まれる仕事はいくつかあります。
データ分析
Webマーケティングの世界は数字(データ)の世界。現実に起きていることを数値化し、それを分析することもWebマーケティングの仕事の一つです。Webサイトへのアクセス数や、Web広告のコンバージョンなど、さまざまな数字を分析する必要があるのです。
ちなみにコンバージョンはCVとも呼ばれ、Webサイト内でユーザーが起こしたアクションのことです。たとえば資料請求を目的としているWebサイトであれば、ユーザーが1回資料請求をすると、コンバージョンが1増えるのです。
このような定量的な感覚は一朝一夕で身につくものではありません。たとえば、「ふらっと入ったラーメン屋が儲かっているかどうか、あなたなりの根拠をもとに分析してください」という問題があったとしましょう。定量的な感覚がないと、料理の味や口コミからなんとなく判断するかもしれません。
しかし、定量的な感覚があると、たとえば次のような分析ができます。
- 平日のランチで◯◯の席数に対して■■人のお客さんが入っている
- メニューの値段はだいたい▲▲▲円で、お客さんは◎◎分ほど滞在している
- ランチタイム以外のお客さんの数を☆☆人として、夜はアルコールメニューもあるため、客単価は××××円になる
- 平日の売上が※※万円だから、それを元に休日の売上を算出すると、###万円になる
- 一方、従業員は常時♭♭人いて、時給が♪♪♪♪円だとすると、コストは♫♫♫万円/月になる
- よって、この店は儲かっている(利益が出ている)、あるいは儲かっていない(利益がでていない)
プライベートでも、このように物事を考える癖をつけると、Webマーケティングの仕事にも活かせるでしょう。
販売戦略の立案・実行
販売戦略の立案・実行のために次のようなことを行います。
Web広告の運用
一口にWeb広告といっても、以下に示すようにさまざまなものがあります。
- リスティング広告
- ディスプレイ広告
- アフィリエイト広告
- 動画広告
- 音声広告
- SNS広告
- 純広告
これらの広告(一部、あるいは全部)を展開し、広告が要因となった集客や売上を分析し、より効果的な広告に絞って出稿していきます。
SEO対策
SEOとはSearch Engine Optimizationの略で、Googleなどの検索エンジンのアルゴリズムを予測して、それに合ったWebサイトを作ることをいいます。しかし、AIによる検索体験(SGE=Search Generative Experiences)の開発が進められており(※1)、これが本格的に供用開始となればWebマーケティングの立場としては、別のインターネット施策が必要となります。
※1:Google Japan Blog「生成 AI による検索体験 (SGE) のご紹介」
SNS運用
近年はSNSを通じて商品やサービスにアクセスする機会も多くなっています。そのため、InstagramやX(旧Twitter)など拡散性の高いSNSを運用して、その中でまずは集客に結びつけていく方法を採用しています。
接客施策の立案・実行
Webサイトで集客したユーザーに次のアクションを取ってもらうことが必要です。
- 商品・サービスの購入やお問い合わせ
- 会員登録
集客したユーザーにこのようなことを促すのも、Webマーケティングの範疇です。
リピート施策の立案・実行
一度、商品・サービスを買ってくれたお客さんは、ふたたび買ってくれる可能性が高いです。そのため、次のような施策を実行して、リピーターを増やすのです。
- Lステップ
- リターゲティング広告
- ダイレクトメール
- バナー広告
マーケティングの効果と検証
Webマーケティングの世界には「これをすれば必ず儲かる」という黄金則はありません。時と場合によって商品・サービスの需要が変わったり、トレンドが変わったりするためです。そうかといって、これまでの経験がすべて無駄になるわけではありません。
これまでの販売実績や購入客層を分析して、次のトレンドに活かすことが大切なのです。Webマーケティングは特にPDCAを必要とする仕事ともいえます。
Webマーケティングのキャリアプランは?
Webマーケターのキャリアプランにはどのようなものがあるのでしょうか?
企業で経験を積む
はじめは企業に就職してWebマーケティングを経験するのがよいでしょう。好むと好まずにかかわらず、さまざまな仕事を一通り経験できます。また、先輩や上司などあなたより実力のある人の仕事を間近で見られます。そのようにして、プレイヤーとしての一通りの仕事をできるようにしましょう。
管理職や経営者を目指す
プレイヤーとして一人前になると、管理職や経営者のポジションが視野に入ってくるかもしれません。しかし、これらのポジションはプレイヤーとしての知識・経験に加えて、社員をマネジメントする力や、さまざまな制約条件(ヒト・モノ・カネ)から経営判断をする力が必要になってきます。
総合広告代理店や企業のマーケティング責任者に転職
総合広告代理店は、Web広告に限らずさまざまな広告を扱っています。そのため、広くマーケティングの経験を積めます。また、企業のマーケティング責任者になれば、Web制作会社や総合広告代理店などマーケティングをサポートする立場でなく、自社の商品・サービスを実際に販売する立場になり、発注者側の景色を見ることができます。
フリーランスや法人化を目指す
組織にこだわらず、フリーランスとして独立する、そして一定規模の売上を上げて法人化するのも一つのキャリアプランです。しかし、独立した時点で本質的には経営者(社長)と同じ立場になります。事業に対するすべての権限がある反面、すべての責任を負うことになりますので、覚悟してください。
未経験者にWebマーケティングの知識を教えるスクールを運営するというのも、フリーランスなら可能です。
Webマーケティングとしてキャリアアップするために必要なスキル
Webマーケターとしてキャリアアップするには次のようなスキルが必要となります。
- データ分析のスキル
- データを元に企画立案するスキル
- 購買心理を想像するスキル
- クライアントの目的を把握するスキル
- マネジメントスキル(管理職・経営者を目指す場合)
- 財務・税務・法務の知識(経営者を目指す場合)
- 人事採用のスキル(経営者を目指す場合)
- ビジネスセンス(経営者を目指す場合)
Webマーケティングの将来性
Webマーケティングそのものがなくなることはないでしょう。しかし、あくまでもWebマーケティングは、SFAやCRMなどのデジタルマーケティングの一部であるため、周辺の知識・スキルの獲得も必要です。
また、経営者を目指す場合やフリーランスとして独立する場合は、プレイヤーとして以外のスキルも必要となります。世の中のトレンドを掴みつつ生き残っていく道を自分で模索すれば、長くWebマーケターとして活躍できるかもしれません。
まとめ
この記事ではWebマーケティングの仕事内容とキャリアについて解説してきました。Webマーケティングそのものがなくなることは考えにくいですが、時代に合わせて新しいスキルやビジネスモデルを柔軟に取り入れていく必要はあります。
Webマーケターとして長く活躍するには、基本的なスキルも大切ですが、実はこのような柔軟性の方が大切かもしれません。